真の学力を伸ばすには、まず教育環境の整備を
《 記 者 の 視 点 》
「読む・書く」柱にカリキュラム・マネジメントの充実を図る
「学力とは何か?」10人いれば、10通りの答え方・捉え方が出てくる問題である。「詰め込み教育は良くない」と「ゆとり」教育に振れ、「教科書が薄くなって、学ぶ総量が少なった」と「脱ゆとり」に振れる。経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)で各国の読解力と大きな開きがあった、だとか、全国学力・学習状況調査(学テ)都道府県単位の順位が下位に甘んじていると、“悲観論”が教育界に続出してくる。
順位が上がったり、下がったりするのは、「設問に答える技術的なものもある」とか「テストに向けた準備ができていたか」など、さまざまな捉え方がある。そういったテストの結果で一喜一憂することなく、「学力とは何なのか? という本質的な問題として考え直す時期に来ているのではないか。読む・書くという読解力・文章力は時代にかかわらず、世界に出て行っても基本として必要なこと」と語るのは天笠茂・千葉大学教育学部特任教授だ。
新学習指導要領で謳(うた)われている「主体的・対話的で深い学び」について対話しながら、グループ活動するという、方法論とか技術論として捉えてはいけない、と天笠氏は言う。これは、文部科学省時代に初等中等教育視学官としてアクティブ・ラーニング(現在は主体的・対話的で深い学び)の旗振り役をしてきた田村学氏(國學院大学教授)が言っている「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を考えることであり、学習に臨む子供の頭の中がいかに活性化しているか、だと語っている。
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官の直山木綿子氏は、英語教育を専門とする立場から高校卒業時点で文科省が目指している英語力は、専門誌を英語で読めるレベルだという。「英語を母語とする相手と討論できるレベルを目指している。しかし、英語の授業だけで、討論や議論することはできない。他の教科で得た知識・基礎学力を基にしなければ、討論などできるわけがない。」と英語以上に他の教科の学力向上、他教科との連携が不可欠だと強調する。
学習指導要領を具現化するためには、児童・生徒の資質・能力を向上させるため、「知識・技能」「学びに向かう力、人間性」「思考力、判断力、表現力」という三つの点に絞って、校長を先頭に「カリキュラムマネジメント」(カリマネ)を充実させ、「PDCAサイクル」を充実させることが必要だと天笠氏は語る。
「PDCAサイクル」とは、「Plan(経過)」「Do(実践)」「Check(評価)」「Action(改善)という四つの行程を単一教科だけでなく、学校教育の中で螺旋(らせん)的に、また、広がりを持たせて行うこと。学校全体の教育課程の見取り図がしっかりできていなければ実践し切れない。
校長のリーダーシップで「チーム学校」をつくり上げ、学校全体が児童・生徒の学力を向上させるという“目標”に向け、地域社会、保護者、教育委員会、自治体などが一致団結し、“教員資格”が無くてもできる教師の仕事をサポートしながら、教育環境を整備することが必要だ。
教育部長 太田 和宏