立憲・国民合流新党 共産党との選挙協力はどうする
《 記 者 の 視 点 》
米国の対中政策の根本的な見直しを告げる政府高官4人の演説が6月下旬から1カ月の間に行われた。その口火を切ったのはオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)で、中国共産党のイデオロギーそのものに切り込んでいる。
同氏は、中国の経済的・政治的な自由化は「時間の問題」とみて進めた対中関与政策は「1930年代以降の米外交政策で最大の失敗」だと指摘。その誤算は中国共産党のイデオロギーに注意を払っていなかったからだと述べ、「中国共産党はマルクス・レーニン主義の組織であり、習近平総書記は自分のことをスターリンの後継者と考えている」と明言した上で、①共産主義の下では個人は国家の目的を達成するために使われる手段にすぎない②中国共産党は国民の生活を全面的に(経済的、政治的、物理的、思想的に)統制しようとしている③中国共産党の明言された目標は「人類運命共同体」をつくり、全世界を中国共産党に合わせてつくり替えることだ―などと批判した。
同氏はまた、マルクス・レーニン主義と聞くと、米国人は30年前にソ連東欧諸国崩壊と共に破棄された古い思想だと思っているが、中国では、米国人にとっての憲法や権利章典のように、中国共産党にとって根本的なものとして残っているのだと指摘している。
これは実に面白い対比だが、結局、米国は中国共産党の根本イデオロギーにまで遡って、彼らが自由、人権、民主主義、法の支配、市場経済など、米国が持つ基本的な価値観や思想、制度と決して相容れないこと―さらに言えば、それを破壊するものであること―を理解し、それに基づいて対中戦略を見直したのだと言える。
尖閣諸島周辺で常態化した中国公船の領海侵犯や、南シナ海で周囲の反対に目もくれず進める軍事基地建設、また、ウイグルなどでの人権弾圧に加え、香港で国家安全維持法を施行して民主化運動を抑圧するなど、中国の最近の動きはとても容認できないものばかりだが、その背景に中国共産党の共産主義思想があることを見逃してはならない。
最も頭を悩ませているのは、同じ名を持つ日本共産党だろう。同党は中国に対し2004年の綱領改定で「社会主義を目指す新しい探求が開始」されていると肯定的な評価を示したが、今年1月には綱領改定でそれを削除し、中国を念頭に「大国主義・覇権主義」を批判する内容を盛り込んだ。香港で民主派弾圧についても、それを強く批判する一方で毎回のように、「中国が行っている人権侵害は『社会主義』とは無縁な専制支配そのものです。社会主義・共産主義は自由と人権、民主主義を豊かに発展させるものです。主権者としての国民の権利や民主主義を刑罰で奪う中国共産党は共産党の名に値しません」(しんぶん赤旗8月13日付)などと主張している。
共産党にとって今は重要な時期だ。国民民主党が先の両院議員総会で同党を解党した上で立憲民主党と合流することを決定し、9月にも合流新党が誕生する見通しだ。国民連合政府構想を掲げて立憲民主と国政選挙での選挙協力を実現した共産党としてみれば、連合政権入りへの期待は高まらざるを得ない。合流新党はこれまでの自民に代わった政権のように「非自民非共産」を貫くか、それとも共産との協力の下で政権を目指すのか、明確な立場を示すべきだ。
政治部長 武田 滋樹