子宮頸がんワクチン 副反応の懸念消えず、 痛みに耐える女性ら訴え
子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に全身の痛みなどを訴える人が相次ぎ、接種勧奨が中止されて1年が過ぎた。厚生労働省の専門部会は「心身の反応が原因」との見解をまとめ、再開を検討している。一方、副反応被害を訴える女性らは「被害者を増やさないで」と、徹底した調査を求めている。
桐朋学園大1年でバイオリンを専攻する横浜市の伊藤維さん(18)は、痛みや倦怠(けんたい)感に耐えながら、プロのバイオリニストを目指して演奏活動を続けている。
伊藤さんの体に大きな変化があったのは、3回目のワクチン接種から1年4カ月後の2012年8月。両足に針で刺されたような痛みを感じ、自力で歩けなくなった。次第に腕や背中にも痛みが広がり、泣き叫んでベッドでのたうち回った。
複数の病院で検査したが異常は見つからず、痛み止めも効かない。原因が分からず、医者もさじを投げた。車いす生活となり、バイオリンを弾くのも困難になった。「夢を諦めないといけないのか」。不安で途方に暮れた。
バイオリンは4歳から続けており、運動も得意で剣道は初段の腕前だった。テレビで似たような症状の少女の映像を見るまでは、ワクチンの影響を考えたことはなかったという。
「このままでは一生弾けなくなる」。伊藤さんは痛みを我慢して練習を再開。大学に進学し、今年5月にはプロのオーケストラとの共演も果たした。力強い演奏に客席から大きな拍手が送られたが、舞台袖では倒れ込むように車いすに乗った。
被害を訴える少女らには、全身のけいれんや記憶障害、知能低下など、より深刻な症状が出るケースも少なくない。伊藤さんは「不安はあるが頑張るしかない。他の被害者が演奏を聴いて元気になってくれれば」と気丈に語った。
(時事)