宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの…


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの最新の観測で、北極域の海氷面積が史上2位の小ささとなり、その減少傾向が続いていることが分かった。ただし、海氷減の減少は海洋生物に負の影響を及ぼすだけではないようだ。今夏、開催された「海洋フォーラム」(海洋政策研究所主催)の報告で知った。

 氷が融(と)け海水が低塩化すると、ある種の骨格を持つ生物は適格化せず減少するが、一方、海流の渦が増え、表層の栄養塩が流入して、魚の餌となるプランクトンが増加する。延々と続く地球形成史の中で、こうした現象が海洋生物の多様性を維持してきたのだろう。

 だが、人間の世界はどうかというと、そうはうまく調和がなされていかないようだ。ロシアは、海氷の減少で航行可能地域が増えたのを奇貨として資源確保を急いでいる。北極域は、未発見のガス田、油田、希少金属の宝庫と言われる。

 これに対し、米国のトランプ大統領は北極海に面するデンマーク領グリーンランド購入を提案したが、当のデンマークの首相に一蹴された。アラスカ買収のようにはうまくいかなかった。

 ロシアはまた、シベリアの北極域方面で数カ所の港の建設を計画し、空軍基地の再建を進めてきた。米露のこの経済、軍事競争に中国が絡んできて大国間の軋轢(あつれき)を生んでいる。

 北極域は日本との距離が遠く、国民の関心は高くないが、通商・貿易、または安全保障への影響が大きいことを忘れてならぬ。