台湾東部から沖縄県与那国島を目指して丸木舟…


 台湾東部から沖縄県与那国島を目指して丸木舟で航海を続けていた国立科学博物館などのチームが無事到着した。台湾の出発地から与那国は見えない。速い黒潮も流れている。どんな気持ちで3万年前のわれわれの祖先は海を渡ったのか。

 現生人類であるホモ・サピエンスが誕生したのは20万年前のアフリカ。10万年ほどはアフリカを出ることはなかったが、10万年前ごろ、北方に向かって歩きだしたグループがあった。

 グループは複数だったろうが、それぞれの人数は150人ほどだったとする学者もいる。150人という数は、ある個人が各人のことを知って安定的な社会関係を維持できる上限とされる。アフリカ脱出の理由は食料問題だったらしい。人口が増え、アフリカで暮らすことが困難なグループが現れた。

 見通しも情報もないまま、故郷を離れることとなったようだ。途中で死んでしまうケースも多かったはずだ。

 それがユーラシア大陸に至り、東西に広がった。東へ向かったグループの一つが、台湾から与那国に向かった人々の祖先だったのだろう。

 命懸けの要素もあっただろうし、絶望的な航海だったとも考えられる。成功や失敗の事例が伝えられることもなかっただろう。故郷から逃げるしか方法がなかった中、冒険心に富んだグループの一部がやっとの思いで与那国に到達した、ということだったのではないか。今回の検証は、幸運・不運さまざまの想像をかき立てる。