縄文文化に興味を持つ人は多い。歌人で世日…


 縄文文化に興味を持つ人は多い。歌人で世日歌壇選者・水城春房さんもその一人。昨年7月、東京国立博物館で縄文展が開催された際、奥さんと見に行ったが長い行列を見て、諦めて帰宅。

 2度目に行った時は一人で、入場できたのはいいが大勢の人々で展示品に近づくことが困難。図録を買い、国宝土偶第1号「縄文のビーナス」のレプリカを買っただけで終了せざるを得なかったそうだ。

 新しい発掘や研究発表があり、全体像が明らかになりつつあるが、謎は多い。興味を抱く多くの日本人に共通して感じられるのは、先祖たちの生活に対する親密な感情ではなかろうか。

 これをヨーロッパ人と比べると面白い。西洋文化のルーツは古代ギリシャ・ローマ、キリスト教、ゲルマン民族といわれる。前二者についての研究は盛んだが、これらは文化的背景。ゲルマン民族の太古に関する関心は割合希薄だ。

 先祖という意識も薄い。ベルギー・ブリュッセル在住の映画監督ジャコ・ヴァン・ドルマンさんによれば、そこは「何もかもうまくいかない街です。しかし多様なものが並んでいて、文化も言葉も混ざり合い、同じ考えを持った人なんていない」。

 「混沌(こんとん)」から先祖への親愛の情は湧かないようだ。昨年公開された映画「縄文にハマる人々」は、その後も上映会やシンポジウムが続いている。先祖や父母や自然への「恩」の思想は島国の歴史が育んだ賜物(たまもの)で、失ってはいけない精神的財産だ。