「きょうは怖い話をありがとうございました」…
「きょうは怖い話をありがとうございました」。小紙愛読者でつくる世日クラブで特定失踪者問題調査会代表の荒木和博氏が講演し、急増する北朝鮮からの漂着船がはらむ問題への危機意識の不足に警鐘を鳴らした。それに対する質問者の率直な感想である。
荒木氏が特に問題にしたのは、2017年11月に秋田県由利本荘市の海岸に着岸した木造船に8人が乗っていたが、地元ではあと2人いたと言われていること。新著『北朝鮮の漂着船』(草思社)では、イカを吊(つ)るしたりするやぐらが残ったままの木造船が無人で漂着したことを重視している。
時化(しけ)に遭った形跡もないのに、なぜ誰もいないのか。船からは、船内で使うはずのない男物の踵(かかと)の高い黒革靴が発見された。白骨化した遺体が見つかることが多い一方、1カ月以上漂流したという割に乗組員が元気なケースもあるなど不審点が多いのだ。
漂着船急増の背景には、金正恩朝鮮労働党委員長が外貨稼ぎのため朝鮮人民軍の水産事業所に発破を掛けていること、近海の漁業権を中国に売ったため、小舟でも沖へ出ざるを得ないことなどがあるようだ。
とはいえ小舟に工作員を乗せている可能性は否定できない。それは受け皿となる工作員が日本国内にいることも示している。
漂着船のほとんどは長さ10㍍前後の木造の平底船。時化ればひとたまりもない。そんな船で漁をさせること自体が怖い話であり、北の人々が置かれた悲惨な境遇を示している。