実業家の堀江貴文氏が「鮨屋(すしや)の…


 実業家の堀江貴文氏が「鮨屋(すしや)の修業はムダ」と発言したことをインターネットで知った。「鮨屋の厳しい修業は本当に意味があるのか?」という疑問を呈している。意味があるのか、単なるムダにすぎないのか。

 その堀江氏が若手人気鮨職人8人と対談した『堀江貴文VS鮨職人』(ぴあ/2018年12月刊)を読むと「下積み段階でほとんどが辞める」と対談相手の一人が答えている。

 「修業(下積み)に意味があるかないか」という問答以前に、現実に辞めてしまうケースが圧倒的に多い。対談相手の中には、実家が鮨屋だったケースもあるから、誰もがよそで修業しているわけではない。それでも、厳しい教育を身に付けた上で鮨職人として成功を収めていることだけは分かる。

 ある職人は「段階を踏みながらもコースを1万円値上げしたところ結果がよかった」と告白する。客層が上がった上、値段を気にせずにいい魚を買えるようになった。

 世間一般の飲食業者がやっていることの逆をやって成功した幸運なケースだ。富豪の堀江氏が値上げに賛同するのは当然だ。

 「若い職人は客にナメられる」との言葉もこの本には出てくる。高級鮨店に若者の客は少ないだろうから、この本に出てくる鮨屋の主人のほとんどが「若さ」の点で辛(つら)い思いをした経験はあるのだろう。仕込みや握りの力量とはまた別だが、客との対応能力も、対面商売である鮨店経営に不可欠な要素には違いない。