住んでいる東京・武蔵野の私鉄駅前ロータリー…
住んでいる東京・武蔵野の私鉄駅前ロータリーの夜を、ツリーや蝶(ちょう)ネクタイをデザインしたクリスマスイルミネーションが彩り始めた。知り合いの店からは今年も、四角の書き込み用空欄が大きくて重宝している昔ながらのカレンダーが届いた。
ケーキの予約が始まっているし、年賀はがきの発売、年末恒例のNHK紅白歌合戦の出場歌手も発表された。北海道からは例年より遅い初雪の便りも。
新年を迎える時の流れに急(せ)かされているように、平成最後の師走から新年へと慌ただしく進むように感じる。前例のない猛暑に見舞われ、自然災害など災いの多かった今年にいち早くサヨナラし、新年に駆け込もうとしているような日々である。
語呂合わせから「いい夫婦の日」の明後22日は二十四節気では「小雪」。<木々の葉は落ち、平地にも初雪が舞い始める頃>だが、例年はぬくい日も少なくない。翌23日が五千円札の端正な肖像でおなじみの樋口一葉の命日。「一葉忌とはこんなにも暖かな」(川崎展宏)の句もあるが、今年は少し寒くなりそうだ。
「にごりえ」「たけくらべ」などの代表作を残し明治29(1896)年に24歳で夭逝(ようせい)した一葉の葬儀には、なじみの質屋の主人が香典を持って駆け付けたという。没後の文学的名声とは別に、生前に生活苦の中でも律儀を貫いたエピソードを残した人である。
最後の歌<木枯らしの吹音(ふくおと)寒き冬夜(ふゆのよ)はかけても君の恋しかりけり>に一献を傾けたい。