<くらがりへ人の消えゆく冬隣>角川源義…
<くらがりへ人の消えゆく冬隣>角川源義。霜月(しもつき)11月は暦の上では冬に入る。日脚が早くなり、朝晩の冷え込みに忍び寄る冬の気配を感じるこのごろ、明日は冬入りを告げる立冬(りっとう)である。
とはいえ今週は曇りの日が多く、少し暖かさが戻ってきて小春日和となりそうとは気象庁の見立てだ。〈木々の葉が落ち、平地にも初雪が舞い始める頃〉という22日の小雪(しょうせつ)あたりまでは、まだ冬にバトンタッチする前の秋が頑張っている。
華やかな紅葉が山や森や湖畔の林一面に燃え上がり、残り少ない実りの秋を彩り豊かに描いてくれる。四季折々の変化を美しく奏でる日本の自然の中でも、紅葉は昔も今も日本人の心を詩情豊かに繊細に育んできた代表的風景である。
それが北から南下し、山から降りてきて東京にやって来る。そんな秋と冬が併存するこの季節に魅せられる紅(黄)葉の美は、燃える赤だけに限らない。イチョウ並木の扇状葉が夕日に照らされ、黄金の輝きを放つごくわずかな時間がある。
その平成最後のシャッターチャンスを逃さないで捉えた写真を掲載するのは、どの新聞だろうか。東京では神宮外苑をはじめ、整備された東京駅と皇居を結ぶ「行幸通り」、本郷の東京大学内外、新宿御苑など至る所の並木がその神秘の美を見られる候補地だ。
自然の光とのコラボレーションが作り出す、まばゆいばかりに輝く幻想的な世界。10年ほど前に神宮外苑で見た感動が今でも蘇(よみがえ)ってくる。