夏休みもあと半月余、暦の上で秋が立って…
夏休みもあと半月余、暦の上で秋が立って1週間が過ぎた。来週23日は暑さが止むとされる処暑(しょしょ)だが、それまでに果たして「災害と認識して」(気象庁)と警鐘を鳴らす今夏の記録的酷暑が収まるのかどうか。
東日本の7月の平均気温は平年を2・8度も上回った。昭和21(1946)年の統計開始以降で最高となった。あまりの猛暑に、大暑のころによくコラムに引用される処世句「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」(村上鬼城)も今年は見掛けなかったほど。
もはや念力を強めたぐらいでは、この酷暑は乗り越えられない。エアコンをどんどん使ってと生命の危険回避を呼び掛けているのに、これに逆行するのは具合が悪いのだろう。
だが歳時記に親しんでいると、真夏にへこたれず17文字に封印し、かえって季節を楽しむ俳人の生命力に舌を巻く。「炎天の地上花あり百日紅(さるすべり)」(高浜虚子)は、この時期に赤やピンク、白の花がひときわ映え、木目も艶やかな木だ。
中村草田男の「炎熱や勝利の如き地の明るさ」は、まるで甲子園の高校野球讃歌の趣である。奥の細道の芭蕉は「暑き日を海に入れたり最上川」の雄大な景色を思い浮かばせてくれ涼やかに。
正岡子規の「炎天の色やあく迄深緑」は、真夏に茂る木の葉の深緑がつくる木陰オアシスを想像するだけで元気が出る。秋の気配はまだ先のようだが、真夏を親しんで詠む俳人のしのぎを力に、気を緩めずに「底知れぬ暑い夏」を乗り越えたい。