妖精たちが登場し愉快な恋物語を繰り広げる…
妖精たちが登場し愉快な恋物語を繰り広げるシェイクスピアの喜劇「夏の夜の夢」。舞台はアテネ近郊の森となっているが、ギリシャに行ったことのないシェイクスピアの念頭にあったのは、イングランドの森だろう。
日の長い欧州の夏を過ごすと「夏の夜の夢」の気分が何となく分かる。ようやく日が落ちたかと思っても、暮れ切るまでの時間が長い。薄闇の中、樹木の下で妖精たちが戯れているような雰囲気を持っている。
とっぷりと日が暮れ、夜泣き鳥(ナイチンゲール)の鳴き声が聞こえてきたりすると、一層想像力が掻(か)き立てられる。欧州では夏至の日に妖精たちが集まり祝祭が催されるという言い伝えがある。
そんな夏の間、欧州では標準時を1時間早めるサマータイム(夏時間)を導入している。これまで主に省エネの観点から日本にも導入してはどうかという意見が何度か出たが、その都度立ち消えとなった。
しかし今夏の猛暑で、2020年東京五輪の暑さ対策が急浮上。大会組織委員会の森喜朗会長らが安倍晋三首相に20年に限ってでもいいので夏時間の導入を検討してほしいと要請した。導入すれば、午前7時となっているマラソンの開始時間は現在の標準時の午前6時となり、暑さはかなり緩和できる。
これに対し菅義偉官房長官は、慎重な姿勢を示した。影響の大きさを考えれば当然だろう。しかし、五輪に限らず酷暑対策に改めて夏時間を検討する価値はあるのではないか。