美術展の内覧会に行くとどこでも同じような…


 美術展の内覧会に行くとどこでも同じようなことを感じることが多い。それは学芸員がよく研究していることだが、視点を変えて言うと、見方を強制されている感じがすることだ。

 その見方は時代の鏡のようなものなのだろう。ところでそれとは反対に、観(み)る人自身の体験を重要視する展示で興味をそそるのは東京都写真美術館で開催中の「イントゥ・ザ・ピクチャーズ」だ。

 「まなざし」「よりそい」「ある場面」などのテーマで同館コレクションの代表的名作を展示している。写っている人が何を感じているのか、どんな状況にあるのか、想像してほしいという。

 解説がないのでじっくり見て、あれこれ想像を巡らさなければならない。有名な傑作《ピカソのパン》(ロベール・ドアノー)のような写真も、そう言われて見直すと、気付かなかったことばかり。

 実はこうした見方は、学校や企業の教育の場で行われてきたものだ。某大学の入試ではW・ユージン・スミスの《楽園への歩み》という写真について、被写体の子供たちが何を考えて、どこに行こうとしているのか述べなさい、と出題した。

 小学校の図工や中学校の美術の授業で鑑賞は創造活動と位置付けられている。丁寧に見るということは作品と対話することであり、理解力や洞察力を養い、写された人々の心の声を聴き取ることでもある。同館では特有の空気感、展示のリズム感なども全身で感じてほしい、と語っている。8月5日まで。