日本の山で登山者が多くなるのは7月下旬から…


 日本の山で登山者が多くなるのは7月下旬から8月中旬だが、尾瀬では6月に集中する。ミズバショウの開花する季節だからだ。これに合わせて先月24日、福島県側の檜枝岐村で山開きが行われた。

 雪解けは例年よりも1週間以上早く、尾瀬ケ原では見ごろを迎えているという。尾瀬だけでなく、群馬県、福島県、栃木県の山々の湿地でミズバショウの群生の見られる場所はかなり多い。

 にもかかわらず尾瀬が特筆されるのは、この花だけではなく、そのロケーションが傑出しているからである。山岳、湖沼、森林、湿原と多彩で、植物学者の武田久吉は「景色ははなはだ複雑し、変化に富む点で、邦内これと比肩し得る地はまれ」と称(たた)えた。

 これを短時間で理解させてくれるのは、檜枝岐村のミニ尾瀬公園にある尾瀬写真美術館である。展示された四季折々の風景はすべて山岳写真家、白籏史朗さんの撮影によるもので、その魅力を堪能させてくれる。

 尾瀬の入山者数は平成に入って10年近く毎年50万人を超え、宿泊施設も収容し切れず、湿原も荒らされ、不毛の地になるのではないかと不安を掻(か)き立てた時期もあった。が、その後は減少した。

 昨年の入山者数は28万人で、2年連続で30万人を下回った。6月でも雪が残っていたことや10月の週末に台風が多かったことなどが指摘されている。近年は登山者のマナーもよくなった。人が多い土曜、日曜を除けば、のどかな尾瀬を楽しめることだろう。