「初雪や水仙の葉の撓むまで」(松尾芭蕉)。…
「初雪や水仙の葉の撓むまで」(松尾芭蕉)。都心で20日午後、初雪が観測された。平年よりも2週間早いというが、雨に交じっていて雪という感じはあまりしなかった。
クリスマス前に都心で初雪は8年ぶりとなる。確かに、東京ではクリスマスにあまり雪を見た記憶がない。街の華やかなイルミネーション、そしてクリスマス商戦ばかりが目立つようだ。
日本では、海外の宗教行事もイベントと化してしまう面があり、考えてみると不思議な気がする。正月の行事も、中国の道教の影響が指摘されているから、昔からこの傾向は変わらないと言えそうだ。
「初雪」の俳句を探すために歳時記の索引をひもといたら、「初」のつく季語の多いことに改めて驚いた。春夏秋冬すべて「初」のつく季語がある。その一部を紹介しても、「初雷」「初嵐」のような気象から、「初雁」「初鴉」「初桜」などの動植物、その他あらゆる分野にわたって「初づくし」がある。
引用した歳時記でも、約100以上の季語があるほど。その中でも、人口に膾炙(かいしゃ)しているのは、「目には青葉山ほとゝぎすはつ鰹」(山口素堂)の「初鰹」。日本人が初ものを好むのも、季節の移り変わりに敏感だからだろう。
「旬(しゅん)」という言葉もある。季節のものを食べる習慣には、自然とともに生きてきた日本人の伝統的な精神文化が表れている。その季節感だけはいつまでも忘れずに伝えていきたい。