5年前の夏に福島県伊達市にある霊山に登った…
5年前の夏に福島県伊達市にある霊山(りょうぜん)に登った。標高825㍍の県立公園で「うつくしま百名山」に指定されている。南側の霊山こどもの村から眺めると、山稜を縁取る奇岩の数々が迫ってくる。
当時はまだ原発事故の影響が大きく、放射線を受けないようにと子供たちは屋外に出ることを戒められ、こどもの村には人影がなかった。だが今は影響も薄れ、今年3月に相馬福島道路が開通した。
これは相馬玉野インターチェンジ(IC)から霊山ICを結ぶもので「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき緊急整備された。時期を同じくして霊山ICに隣接して道の駅「伊達の郷(さと)りょうぜん」もオープンした。
いちごサイダーや、薬草を用いた翡翠(ひすい)麺など、特産品が並んでいる。高速道路のネットワークを生かした伊達市の玄関口として交流拠点にしたいという。目指すのは歴史観光案内の充実。
今年は霊山神社のご祭神、南朝の北畠顕家の生誕700年でもあり、同神社では、これを記念する春の例大祭が先月末に開かれた。奉納されたのは伊達市指定無形民俗文化財「濫觴(らんじょう)武楽」をはじめとする太鼓、古武道、舞踊など。
濫觴には「物事の始まり」という意味があり、濫觴武楽は出陣の舞だ。演じたのは地元の小中学生で、白鉢巻きにはかま姿。大空に太刀をかざして進む抜刀舞踊だ。顕家が霊山に入城する際、地元民が舞ったと言われる。急激な環境と時代の変化を感じさせる一連の出来事だ。