平昌冬季五輪では、モーグル男子の原大智…


 平昌冬季五輪では、モーグル男子の原大智、ジャンプ女子の高梨沙羅両選手が銅メダル、スケート女子1500㍍の高木美帆選手が銀メダルを獲得した。目標にした色とは違ったかもしれないが、いずれも感慨深く、また将来へつながるメダルだ。

 日本人としては、このメダルラッシュでようやく五輪らしくなってきたというのが実感ではないか。何しろ開会式以降、五輪が北朝鮮の微(ほほ)笑み外交に乗っ取られたような状況だったから。とりわけ、金正恩朝鮮労働党委員長の妹の金与正党中央委員会第1副部長は、正恩氏の親書を携え、文在寅大統領に訪朝を招請。水際立った外交デビューを果たした。

 テレビに映る与正氏はにこやかに笑みを浮かべることもあったが、クールさが印象的だった。堂々とした振る舞いは、自分たちこそが「日本帝国主義」と戦った朝鮮半島の「正統政権」であるという自己顕示のようにも見えた。その表情には一種の凄味(すごみ)すらあった。

 一方、芸術団や美女応援団は愛嬌(あいきょう)で魅了した。小紙の上田勇実ソウル特派員によると、江陵での芸術団公演では、中高年が大半の聴衆を前に1970年代から80年代の韓国の流行歌13曲を披露した。

 比較的反共意識の強いこの世代も籠絡しようというところか。抜け目なく北の体制宣伝の歌も1曲入れている。

 五輪はこれからも熱戦が続く。しかし政治外交の方は、「祭りの後」を見据えて、一つ一つ手を打っていかなければならない。