福島県会津地方の観光地図に国指定天然記念物…


 福島県会津地方の観光地図に国指定天然記念物の「赤井谷地」の所在地が記載されている。猪苗代湖の西、戸ノ口古戦場の南方だ。谷地は湿原や湿地のことで、ここは北方系の植物が自生する陸化型の高層湿原。

 ある年、その存在を知ってぜひ見たいと訪ねた。車で周囲の道をたどったが、地元の人に聞いても入り口が分からず、1周して振り出しに戻った。行き方が分からないまま諦めるしかなかった。

 また別の年に、戊辰戦争の際、撤退してきた会津藩兵らがたどったという旧滝沢街道を通ったことがある。車が通るのがやっとの淋(さび)しい山道で、脇に倒れた会津藩兵の墓碑群があった。

 維新当時の雰囲気が残っているほの暗い道だ。その山道の脇に赤井谷地への入り口があった。昭和天皇が2度訪れられたという場所がここだったのだ。藪(やぶ)の中の細い踏み跡を越えていくと、広い湿地の全貌が見えた。

 地元では今、湿原の観光面での活用を模索する一方、周縁部の乾燥化のために植生の変化が確認され、貴重な植物群の減少が懸念されている。大正末期に谷地は約100㌶あったが、現在はその3分の2。

 原因は周囲の開発による地下水の減少だそうだ。1999年から会津若松市は排水抑制など保護に着手。地元紙の記事を見ると湿原がいかにデリケートなのか感じられる。気流子が見た谷地には踏み跡があり、たどろうとしたがクマザサと泥で無理。旧滝沢街道同様、淋しい風景でいいのだと思った。