ファミリーマートが「忖度御膳」なる弁当を…


 ファミリーマートが「忖度(そんたく)御膳」なる弁当を、12月1日に80万個限定で販売するという。今年の流行語となった「忖度」にちなんだ和風弁当らしい。キンメダイ、ノドグロなど、少し高級な食材を用い、コンビニ弁当ではやや高めの798円。お品書きには「この案件、うまくいくとめでたいです」などと書かれている。

 忖度という言葉は、日常会話で普通に使われるものではない。それが、森友学園問題で籠池泰典前理事長が、国有地の値下げについて官僚の忖度があったと思うと述べたことで、にわかに流行語になってしまった。

 しかし、もともと忖度は「相手の心を推測する」という意味で、善悪とは無関係だ。上役の気持ちをおもんぱかり、その意を迎えることに意味が限定されるものではない。

 むしろ忖度という行為は、日本独特の無言のコミュニケーションの側面を持つ。「母の気持ちを忖度して」など、思慮深さ、思いやり、気配りなど日本人の奥ゆかしさを背景にしたものである。

 そういう意味で、日本文化は忖度の文化と言ってもいい。そうでなければ、おちゃらかしはあるものの、忖度をテーマにした弁当が発売されることもないだろう。

 「忖度」の商品化ということでは、ほかにも「忖度まんじゅう」というのが、関西で発売されている。こういう際物商品は、そのうち注目されなくなるだろう。しかし、言葉の歪(ゆが)んだ使われ方はそのまま定着していく恐れがある。困ったものだ。