海のもの山のものと鍋ものに熱燗(あつかん)…


 海のもの山のものと鍋ものに熱燗(あつかん)がうれしい季節である。酒を称(たた)えた言葉に<酒は百薬の長>ということわざがある。だが、吉田兼好は「百薬の長とはいへど、よろづの病はさけよりこそ」(徒然草)と戒めている。

 <薬と毒は紙一重>とも言うように、薬より勝るという酒も、薬のように飲みかた(分量)が過ぎると毒ともなることに注意すべきだ。酒は適量たしなむのはいいが、同じ嗜好(しこう)物でも、たばこの方は害毒一色で旗色がすこぶる悪い。

 初夢に見ると縁起がよいとした順番に<一富士二鷹三茄子(なすび)>があるのはよく知られている。これには後半があり<四扇五煙草六座頭>と続く。

 どれも祭りや祝い事を盛り上げる“めでたい”存在とされたが江戸時代の話。今やたばこは迷惑な存在だから、せめて愛煙家は納税で貢献を、というわけであろう。

 政府が、たばこ税を来年10月から3年がかりで1本当たり3円増やす案で与党と調整に入った。この通り進むと日本のたばこ価格は1箱500円時代を迎えることになるが、日本財団の笹川陽平会長は最新のブログで「わが国は何故に、たばこの小幅増税を繰り返すのか」と異議を唱える。

 ニューヨーク、ロンドンは1箱1000円、豪州が2070円、ニュージーランドは1760円だから「一度に1000円に値上げすれば、税収も増加し、禁煙者も増え、医療費も大幅に抑制できる」と言うのだ。一見、暴論のようでも、よく読むと理に叶(かな)っている。