宇宙に大量に存在するとされる正体不明の粒子…


 宇宙に大量に存在するとされる正体不明の粒子「暗黒物質」の世界初の観測を目指す東大宇宙線研究所などのプロジェクトで、2013年から始まった「XMASS(エックスマス)実験」が来年末で終了することになった。

 暗黒物質はまだ発見されておらず、約30億円の大型装置への改修計画を政府に申請していたが、予算が認められなかったためだ。国立大学法人や関係機関の運営は国からの交付金に多くを依存しているため、断念はやむを得ず、というわけだ。

 04年の国立大学法人化以降、政府の運営費交付金はほぼ毎年減り続け16年までにトータルで04年比12%減となっている。くだんの研究中止はこうした流れの中にあろうが、減額の打撃は小さくない。

 それらの研究を手掛ける昨今の日本の理系研究者の置かれた苦境もしのびない。国の交付金縮小の影響で若い研究者たちが任期付きのポストしか得られず、過去20年で40歳未満の研究者は5000人も減ったとみられる。

 「いつ失職するかしれない状況で40歳を迎えるようでは結婚もままならない」とは、博士課程修了の任期付き研究者の一人。

 日本人ノーベル賞受賞者の多くは、大学の研究期間の無名の時、海外留学し他流試合で力を付けて大きな仕事をした。だが今、博士課程への進学率は低下し続け、「博士」のステータスは下がりっ放しで余裕はない。このまま手を打たなければ、日本の科学技術の凋落(ちょうらく)は目に見えている。