通りすがりの人間に危害を加える出会い頭の…
通りすがりの人間に危害を加える出会い頭の事件や通り魔事件では犯人にはっきりした動機がない場合が少なくない。川崎市宮前区梶ケ谷の貨物ターミナル駅下トンネルで2006年9月、帰宅途中のアルバイト黒沼由理さん(当時27)が刺殺された事件もそうだった。
目撃情報や街中の防犯カメラの映像でも決定的なものはなく、最近まで東急田園都市線梶が谷駅周辺では、宮前署員ら約10人が事件の情報提供を呼び掛ける作業を続けていた。特捜本部は、これまで延べ2万3726人の捜査員を投入したという。
ところが昨年1月、別の通り魔事件で服役中の男が「(黒沼さんの)事件について話したい」と申し出た。神奈川県警は慎重に捜査し、供述内容に矛盾はないと判断。この元会社員(37)を黒沼さん殺害の容疑で逮捕した。
既に警察は、現場に容疑者のものと思われる靴の跡が残されていたこと、容疑者の靴の中に被害者のものとみられる微物があったことなどを掴(つか)んでおり、重要な証拠として調べを進めている。
都会の死角で起きた11年前の事件だが、「一筋の光明を見いだした思いだ」と被害者の両親が警察を通じコメント。地元住民たちも胸をなで下ろしているさまが目に浮かぶ。
「天網恢々(かいかい)疎にして漏らさず」である。捜査の執念が実った。国際化時代を迎え、わが国の治安について気になるという声もあるが、凶悪犯罪の検挙率は依然高いということは数字に出ている。