災害の被害をできるだけ軽減する「減災」の…
災害の被害をできるだけ軽減する「減災」の考え方が、国民の間に浸透してきている。経済・産業界では中部経済連合会(豊田鉄郎会長=豊田自動織機会長=)が減災投資を訴えている。
豊田氏はインタビューで「東日本大震災では部品メーカーが被災し、自動車各社の生産に大きな影響が出た」と振り返り、産業界全体、地域全体で取り組むべきだと話している(本紙18日付)。
なるほど耐震補強工事などは確かに必要だが、ただ疑問に思うのは、同連合会が企業の減災措置に対する法人税の優遇税制を創設するよう主張している点だ。2018年度の税制改正に向けた意見書では、対策投資をした場合、30%の特別償却か7%の税額控除を行うよう求めている。しかし、これは腑(ふ)に落ちない。
従来、どの企業も生産ラインの確保に意を尽くしてきた。事故が起きてしまった時の顧客・消費者に対する影響を極力抑え、信用失墜を免れるようにするのは、あくまでも自己責任だった。
また安全対策についても同様で、現在の土木工事では、100年に1回程度の頻度で起こると推定される規模の災害に耐えられるよう設計、施工されている。あるいは、航空機産業では確率のごく低い事故を想定した対策に高額の費用を掛けている。
減災は企業が自主的に行うそれらの対策と切り離して論じ得ないもの。企業体が危機管理の延長線上に早急に着手し、税制うんぬんを前面に押し出すべきでない。