「梅漬の紅は日本の色なりし」(粟津松彩子)…


 「梅漬の紅は日本の色なりし」(粟津松彩子)。「~王子」や「~男子」という言葉の一つに「弁当男子」がある。

 これは自分で弁当を作って会社に持っていく男性のこと。話題になりだしたのは2008年末ごろかららしい。趣味で料理をする男性が増えてきたという社会状況の変化が背景にあるだろう。

 弁当というと、母親に作ってもらって学校に通ったことを思い出す。当時は、金属製の弁当箱にご飯を詰め、ノリやサケの塩引きなどがおかずだった。ご飯の真ん中には赤い梅干しがあり、「日の丸弁当」と呼ばれていた。

 ところが、現在の「弁当男子」の弁当をインターネットで見ると、到底男性が作ったとは思えないほど、見た目もきれいで、おかずも種類が豊富。料亭のものと言ってもおかしくないほど完成度の高いものもある。母親の手作り弁当が当たり前だった世代にとっては、ギャップを感じてしまうところである。

 弁当のことを書くのは、老後のことも考えて、自分も「弁当男子」となってみようと思ったからだ。何しろ、同世代の知人友人の訃報や連れ合いを先に亡くした話を聞くことが少なくないのである。年を取ってから自分で身の回りのことをしようと思っても、それではもう遅い。

 たかが弁当、されど弁当。高齢化社会では特に、自分のことは自分でできるように準備しておかなければならない。それは個人だけでなく、社会や国家の次元でも通じる問題である。