山開きのシーズンである。群馬、福島、新潟…
山開きのシーズンである。群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園でも山開きが行われ、夏山シーズンが始まった。尾瀬ケ原では例年より雪が多く残っているが、傍らではミズバショウが開花している。
「夏がくれば思い出す」の歌詞で知られる「夏の思い出」は江間章子の作詞、中田喜直の作曲で、昭和24年6月、石井好子による歌がNHKラジオで放送された。だが江間は故郷、岩手県のミズバショウしか知らなかったという。
中田も尾瀬に行ったことがなかった。詩からイメージを膨らませて作曲したのだ。当時、尾瀬はわずかに植物学者や地質学者が訪れるだけの静かな湿地。登山者がこぞってやって来る所ではなかった。
尾瀬がにぎわうようになるのは、この歌が流行したためだった。そして平成8年には年間64万人もの入山者を数え、木道も山小屋も許容量を超えた混雑ぶり。その後は減少傾向で昨年は29万人だった。
今年4月には、東京の東武浅草駅と福島県の会津田島駅を結ぶ「リバティ会津」が運行を開始し、その乗客を檜枝岐村の尾瀬に運ぶ急行バスも、山開きに合わせて登場した。それでも首都圏の人が福島県側から入るのはやはり遠い。
その檜枝岐村のミニ尾瀬公園の中に「武田久吉メモリアルホール」がある。彼は植物学者で尾瀬の山岳美を発見し、記録した人物。自然保護に尽力した業績を振り返る意味でも、このホールを訪れる価値がある。