東京都写真美術館で、幕末・明治期の写真資料…


 東京都写真美術館で、幕末・明治期の写真資料を紹介する「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総集編」展が開催中だ。10年以上の歳月をかけて全国の美術館、博物館などを調査し、体系的に整理したもの。

 10年以上も準備したという企画はまれだ。調査のため4度にわたって総数7987の機関にアンケートを送り、回答総数は2996に及んだという。所蔵があると返答したのは358機関。

 この時期の写真史には謎が多く、著名な写真師以外の人物研究が進みにくかったが、その空白を埋めることになった。調査を担当した同美術館学芸員の三井圭司さんは「その成果を見ていただきたい」という。

 日本で最初に撮影された日本人ポートレートの1枚は「田中光儀像」。嘉永7(1854)年、ペリーの再来航に同行した写真師エリファレット・ブラウン・Jrが撮影した。国指定重要文化財になっている。

 三井さんは「重要文化財が増えたことで、古い写真の位置付けが変わってきた」と解説。初期写真には人物像が多く、島津斉彬、吉田東洋、松本良順、勝海舟、土方歳三ら著名人も登場する。

 写真には不思議な現実感があって、時間を飛び越えたように彼らの生活感まで伝わってくる。ペリー再来航以前の写真では、米国で1851年に撮影された「栄力丸船員仙太郎」と「亀蔵」の肖像がある。船が漂流し、サンフランシスコ沖で撮影。2人とも体格が良く、まさに船乗りの顔だ。