世界的チェロ奏者ヨーヨー・マさんが“シルク…


 世界的チェロ奏者ヨーヨー・マさんが“シルクロード・アンサンブル”を結成したのは、2000年に米マサチューセッツ州の町で異なる歴史と文化を持つ国々の音楽家を集め、ワークショップを開いたことが契機だ。

 「音楽は普遍的な言語である」とハーバード大でL・バーンスタインから学んだが、知らない者同士が集まって何が起きるのか、死ぬほど不安だったという。10日間のコラボの後、16曲の新曲を披露して観客は沸いた。

 演奏家たちは互いの共通点を見いだし、このユニークなアンサンブルが創設された。13年10月からモーガン・ネヴィル監督が撮影チームを組んで、彼らを中国、ヨルダン、トルコ、スペイン、米国と追った。

 そして完成したのが今月4日公開される米映画「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」。クラリネットやチェロの他、アラビアのウード、中国琵琶(ピパ)、ペルシャのケマンチェなど、奏者の生い立ちまで追う。

 皆超一流の伝統音楽継承者だが、現代の紛争や複雑な社会問題を背景に、一度は故国を去った人たち。伝統とアイデンティティーの問題を抱えているが、文化が交差するところで新しいものが生まれることを実証した。

 主題のように繰り返されるのは、マさんによるバッハの無伴奏チェロ組曲第1番。そこに中国の伝統音楽がコラボすると、奇跡のように調和し、聴く者は驚きと喜びに包まれる。バベルの塔で分裂した言語を今、音楽が一つにする。