兵庫県加古川市の鶴林寺は「播磨の法隆寺」…


 兵庫県加古川市の鶴林寺は「播磨の法隆寺」と呼ばれる聖徳太子ゆかりの名刹(めいさつ)。「日本書紀」や寺伝によると、高句麗の渡来僧、恵便が初代住職で、教えを受けた聖徳太子の命により創建された。在日韓国人にとっても、誇らしい日韓友好の寺である。

 2002年この寺に韓国人窃盗団が侵入し、国の重文を含む文化財8点が盗み出された。4カ月後に犯人は捕まり7点は返ってきたが、高麗仏画「阿弥陀三尊像」は韓国に持ち去られた。その後仏画は発見されたが、“寄進”された韓国の寺は返還に応じていない。

 これに心を痛めたのが、在日二世のオカリナ奏者・鄭光均さんだ。鄭さんは韓国で記者会見を開き、「在日同胞が愛してきた、在日の心があるお寺から盗むなんて嘆かわしい」と、仏画の返還を訴えた。

 韓国の大田地裁は、12年に長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に持ち込まれた県指定文化財「観世音菩薩」について、韓国の寺に所有権があるとの判断を示した。仏像が14世紀に倭寇によって奪われたという証拠のない主張を認めたのである。

 証拠に基づくべき司法がこうした判断を下したとあっては本当に法治主義が機能しているのかと疑われよう。

 釜山の少女像問題では、民団の呉公太団長が「撤去すべきというのが在日同胞の共通した切実な思いだ」と訴えた。日韓の狭間で苦しむ在日韓国人の立場を、韓国民や指導者たちはどう受け止めているのだろう。