「大空の深きに落葉舞ひ上る」(高浜虚子)…


 「大空の深きに落葉舞ひ上る」(高浜虚子)。落ち葉が増える季節になった。空気が乾いている時は、踏むとかさかさと音を立てる。

 この音が寂しいような、楽しいような不思議な気分にさせてくれる。それにしても、同じ落ち葉でも紅葉はどうして美しいのだろう。折り紙のように見えることもある。

 紅葉にしても、他の枯れ葉にしても、寿命が尽きて落ちてくることに変わりはない。それなのに、一方は美しく見え、他方は枯れ果てた感じしかない。美しく生きて死ぬ人生もあれば枯れ果てて終わる人生もある。そんなことを表しているようにも思われる。

 江戸時代後期の僧侶で歌人や書家でもあった良寛は、紅葉の落ち葉について俳句を作っている。「裏をみせ表をみせて散るもみじ」。ごく当たり前の風景を詠んでいながら、そこに人生の機微を感じさせるのが良寛のすごさである。

 どのように生きたとしても、最後には土に帰るのが人間の一生。ならば、飾らずにありのままに生きるのがいい。良寛のそんな言葉が聞こえてくるようである。

 地震で子供を失った知人にあてた良寛の手紙が残っている。そこには「災難に遭う時節には災難に遭うがよく候、死ぬる時節には死ぬがよく候」という言葉が書いてある。普通ならば、悔やみを述べるところである。だが、こうした直言こそ生きる糧となり力になる。そんな気にさせるのが良寛の言葉である。