「新涼の山々にふれ雲走る」(今井つる女)…
「新涼の山々にふれ雲走る」(今井つる女)。ついこの間まで蒸し暑い日々が続いたと思ったら、最近は朝夕が肌寒い。このまま涼しい秋に入るのかどうかは分からないが、半袖シャツなどの薄着では震えがくるほどの気温だ。
台風などの影響もあるようだから、今後、残暑がぶり返すかもしれない。いずれにしても、過ごしやすい天候になったことは間違いない。あれほどうるさかったセミの声もあまり聞かれなくなったが、秋の虫たちの合唱にはまだちょっと早い感じがする。
最近、公園近くの道を歩いていると、命が尽きたセミたちの死骸を見かけることが多い。仰向けになったまま、6本の細い脚が組み合わされ、祈っているような姿である。不思議なほど静かな生の営みの終わりを感じさせる。
秋の虫たちは、まるで音楽会のように多彩な音を奏でる。スズムシやコオロギ、クツワムシ、キリギリスなど。その鳴き声は物悲しい感じがするほどである。
先日、ゴーヤの繁茂する棚に下がっている実を見ていたら、その陰からバッタが顔をのぞかせているのを発見した。どこかとぼけたような表情が何ともおかしい。バッタは愛嬌があるとはいえ、イナゴなどは稲を食い荒らす害虫となっている。
気流子の少年時代に、イナゴの佃煮をザルに入れて家に売りに来たことを覚えている。今では珍味扱いのようだが、当時はごく普通の食材だったのである。