「新聞をなくして政府を残すべきか、政府を…


 「新聞をなくして政府を残すべきか、政府をなくして新聞を残すべきか、そのどちらかを選ばなければならないとしたら、私はためらうことなく後者を選ぶだろう」という言葉を米国の第3代大統領のトーマス・ジェファーソンが残している。

 ジェファーソンは一方で、当時の新聞の実態を厳しく批判している。「わが国の新聞がたどってきた堕落した状態、執筆者たちの悪意ある言動、下劣な品性、偽りに満ちた精神を遺憾に思う」とも語った。

 民主主義社会の根幹にあるのは言論・報道の自由の保障である。反対意見も含め多様な言論をたたかわせ、メディアが権力へのチェック機能を果たすことで成り立つから。

 ジェファーソンは言論の自由を支持したが、メディアには繰り返し公正な報道を求め続けた。メディアを権力で規制しようとするような言動はあってはならない。自民党若手議員の勉強会でのメディア批判は、国会議員としての自覚を欠く軽薄浅慮の批判を免れない。

 権力の一端にある者が備えるべき見識や自制心が見られず、驕りが表れたことも否めない。安倍晋三首相が「事実ならば大変遺憾だ」とし、問題を重視した谷垣禎一幹事長が関係責任者の処分を即断した措置は妥当な対応と言えよう。

 同時に、虚偽報道や偏向報道への正当な批判も、このことで萎縮させてはならない。メディアもまた「第四権力」と言われる存在で、読者の厳しいチェックが求められる。