「いくつになっても童女の心を持っていた…


「いくつになっても童女の心を持っていた越路さんは、パーティーのさなかに私をベッドルームへ引っ張って行き、小さな声で、『私いくつになったの? 本当にいくつ?』と耳元でささやくこともあった」

 先日亡くなった作詞家の岩谷時子さんは『愛と哀しみのルフラン』の中で、シャンソン歌手・越路吹雪さんの思い出を綴った。岩谷さんはマネジャーで、「私のことを書いてね」という越路さんとの約束を果たしたのだ。

 二人は親友で、越路さんの歌ったシャンソンの大半は、岩谷さんが訳した。越路さんから「あんた、男性がこわいんでしょう」と問われ、岩谷さんは大恋愛の経験がなく、自分は「恋愛オンチではないだろうか」と打ち明ける。

 作詞家としての岩谷さんは、加山雄三さんの「君といつまでも」やザ・ピーナッツの「恋のバカンス」など、ヒットした曲はあまた。恋の詞をどのように書いたのか、生前、伺う機会があった。

 「メロディーのつく詞は、作曲家がいて、編曲者がいて、歌手がいて、共同作業ですから、全員がそろわないといい作品にならないのです」という。加山さんには加山さんの人柄に合わせて書いた。

 仕事一筋で、みんなから遊ばない人、と言われた。が、岩谷さんによれば「私はお芝居を観たり、歌を聴いたり、映画を観たりするのが一番好き。しじゅう見て歩いています」。その楽しみが作詞の原動力にもなったようだ。