原子力発電の停止によって電力供給が不安定になることが憂慮されるが、… 


 原子力発電の停止によって電力供給が不安定になることが憂慮されるが、これ以外にも大きな不安材料がある。「発電配電の分離」だ

 電力会社の発電事業と送電事業を分離し、太陽光など多様なエネルギー発電を手掛ける事業者の送配電網利用を容易にするというもの。電力会社間の競争によって電気料金の低下を引き出そうというのが狙いの一つだ

 だが、反対意見も少なくない。経済産業相の諮問機関、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会が先月末開かれ、委員の一人、西川一誠・福井県知事が意見書で「市場競争にさらされる発電事業者が最小限のコストで原発を運転することにより安全投資がおろそかになるのではないか」と反対を表明

 資源が乏しい上、国際送電網を持たない日本。「必ずしも成功しているとは言えない諸外国の先行例を教訓に慎重に検討する必要がある」と拙速を戒めている

 発電配電分離を不安視する声は、特に精密機器関連企業の現場に多い。従来、日本の電気の質は厳しい管理によって維持され、それが高度なデバイス技術を支え、ICチップなど高品質の製品を生み出してきた。しかし、発電配電分離は電気の質を低下させかねないのだ

 政府は発電配電分離を含む電気事業法改正案について、価格の適正化が図れるかなどの論点を議論しており、臨時国会で成立を期すという。民主党政権からの懸案だが、さらに議論を尽くすべきだ。