「歴史は繰り返す」というが、確かに歴史を…


 「歴史は繰り返す」というが、確かに歴史を振り返れば同じような出来事が、その時代と主役を替えて起きてきた。ロシアの「クリミア併合」への動きに似たものとしては、1938年のヒトラーによるズデーテン併合がある。

 プーチン大統領が今回ロシア人の保護を理由にしたのと同じく、ヒトラーはチェコスロバキアのズデーテン地方に多かったドイツ系住民の保護を名目に軍事介入の構えを見せた。結局ミュンヘン会談でチェンバレン英首相らが宥和(ゆうわ)政策からその理不尽な要求を呑み、これがヒトラーを増長させた。

 もちろんプーチン大統領=ヒトラーと決め付けるつもりはない。政治家としてのタイプからすれば、ヒトラーは狡猾ではあったが、若い頃画家を目指しただけあって、根はロマン主義的でそれゆえに冒険主義にも走った。

 それに対しプーチン大統領は、したたかな現実主義者で国内の権力基盤も強固。しかも柔道家で、冒険主義には陥らないが、勝負の機微は心得ている。

 対戦相手としてはどこから攻めていいか分からない実に手強(てごわ)い嫌な相手だ。実際、クリミア危機は今のところ、プーチン大統領のペースで進んでいると言っていい。

 日本を含めた西側諸国がどれだけ強力な制裁措置を実行できるか。一応格好をつけるだけのものではだめだ。武力による主権侵害という行為が、全く割に合わない代償を伴うことを知らしめるものでなければならない。