東京の国立劇場で久しぶりに人形浄瑠璃・文楽…
東京の国立劇場で久しぶりに人形浄瑠璃・文楽の公演を観た。演目は「御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)」と「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」。平日夕方の公演だったが、席は9割方埋まっていた。
「本朝廿四孝」奥庭狐火の段では、桐竹勘十郎さんが遣う八重垣姫に、諏訪大明神の使いである狐の霊が乗り移った場面が圧巻だった。竹本住大夫さんや吉田簑助さんをはじめとした人間国宝の芸が、比較的安い料金で観られるのは申し訳ないくらいだ。
三味線と浄瑠璃と人形遣いが三位一体となって、人形に命を吹き込み、深い感情を表現する。人形芝居は世界各地にあるが、ここまで芸術的に洗練されたものはない。世界無形文化遺産たるゆえんだ。
しかし、文楽をめぐる状況は必ずしも良好とは言えない。橋下徹大阪市長は、大阪の国立文楽劇場への補助金を入場者数に連動して決める新方式を導入。入場者数が基準に達せず、来年度は700万円削減されるという。
一方、橋下市長は数億円かけて大義名分に乏しい出直し市長選をやろうとしている。伝統文化の価値が分からない市長と言われても仕方がない。
だが、ここは市長を恨むより新しい文楽ファンの開拓に力を入れるべきだ。例えば若手の修業を兼ねて外国人観光客をターゲットに、文楽のさわりを紹介する公演などやってはどうだろう。文楽は過去の海外公演を観ても分かるように、世界の芸術愛好家を魅了するものがある。それをもっと生かしたい。