立春が過ぎても春の気配は遠く、冬が居座って…


 立春が過ぎても春の気配は遠く、冬が居座っている。日の出は日ごとに早くなるが、日本海側では吹雪が続き、東日本でも寒気が厳しい。それが2月だ。4日には関東地方で雪が降り、昨日も気温は低かった。

 この寒中の時期に行われるのが裸祭りだ。新年の行事として、その年の幸を祈念し厄払いをする。岩手県奥州市にある黒石寺の蘇民祭もその一つで、きょうの夜(旧暦正月7日)から7日にかけて開催される。

 奥州市は古代東北史の中心舞台で、黒石寺の創建は古く、天平元(729)年行基の開基とされる。蘇民祭は全国各地に伝わっているが、黒石寺では1000年の歴史をもつと言われ、国の無形民俗文化財に指定されている。

 国道沿いに大角燈を設置し、山から木を切り出して祭場の標識を立て、休憩所となる小屋を建てて準備してきた。祭りは夜の闇の中で行われるが、クライマックスは護符の入った蘇民袋の争奪戦。

 極寒の雪の中、裸で奪い合い、明け初める時刻、最後に奪った者の住む方角に五穀豊穣(ほうじょう)が約束されるという。数年前、胸毛のある男性の写真がポスターに使われて話題になり、取材陣が殺到したことがあった。

 祭りは神事で、大衆文化、娯楽文化とは違う。その違いは重要だ。男たちの激突は危険を伴っている。心身の統一が不可欠で、寒中に褌(ふんどし)一本で立ち向かっていくところに、神仏への祈念の心がある。