東京都知事選の投票日まで1週間を切った。…


 東京都知事選の投票日まで1週間を切った。2020年東京五輪・パラリンピックへの対応や原発活用の是非を含めたエネルギー政策などに関して、各候補者の主張は割とはっきりしているが、いまひとつ盛り上がりに欠けている。

 主張がぶつかり合い、火花を散らし、化学反応して、目指すべき将来の姿が有権者の内に描かれるというのが本来の選挙戦だろう。しかし、それがなかなかかなわない。

 1960年代、東京砂漠という言葉が流行(はや)った。ビルの谷間にひしめく人間、心は砂漠のように潤いなく……といった心象風景だった。それから半世紀たち、そんなモノトーンでは表現できない、変化し続ける街になった。

 東京で生まれ育ち、「故郷」にする若者が圧倒的に増えた。東京を終(つい)の棲家(すみか)に決め、郊外に構えた住宅を拠点に、毎日をエンジョイするお年寄りも少なくない。半面、孤独死などの問題も出てきた。

 観光都市として海外からの客が増加し、美しい木立ちが続く街並みが各所に出現した。IT技術の集約された金融、情報都市となり、産業と生活の場が入り組んで実に多彩な顔を持つ膨大な消費空間だ。変化は五輪開催に向けてさらに加速しよう。

 こうした現状を引き継ぎながら、未来をリードしていくことができる人物は誰なのか。前知事の任期途中の辞職によって慌ただしい雰囲気の中で始まった選挙戦だが、この1週間でしっかりと見極めたい。