東京・調布市に古刹(こさつ)、深大寺がある…


 東京・調布市に古刹(こさつ)、深大寺がある。隣接する都立神代植物公園の東脇を通る北参道から山門に入り、山を下って参拝した。サクラが満開の時期だったが、神代植物公園は新型コロナウイルス対策のため閉鎖。

 北参道を歩きつつ、フェンスから公園の中をのぞくと、サクラだけでなくさまざまな花が開花し、賑(にぎ)やかな饗宴の趣。人はいない。見られてばかりいる植物にも、休養が必要なのだろうと思った。

 北門付近に来ると、樹木が多く、森のようであり、若葉が萌(も)え出て、大地のエネルギーが湧き上がってくる感じだ。境内に入って、釈迦堂に祀(まつ)られた国宝釈迦如来像を参拝。以前と違って拝観料300円が必要だが、賽銭(さいせん)箱に入れるだけ。

 いつ見ても、清らかで、端正で、笑みがあり、ほれぼれする白鳳仏だ。第87世住職の故谷玄昭さんは、深大寺の始まりに関心を寄せて『住職がつづるとっておき深大寺物語』(四季社)を執筆。

 詳述されているのは日韓関係だ。お寺の創建は733年で、開基は満功(まんくう)上人。その母親は地元の長者右近の娘で、父親は出自不明の福満だ。長者の家系は温井(ぬくい)氏といい、渡来人で、ルーツを北朝鮮の温井里と推定。

 福満については、福の字が高麗僧「福嘉」、百済王「全福」など、朝鮮半島の人名に多いことから渡来人と考える。白鳳仏についても、腰を掛けた姿の倚像(いぞう)は新羅と百済に多く、朝鮮半島との関係の深さを指摘する。帰途、門前で名物の蕎麦(そば)を食べた。