中国・内モンゴル自治区で、当局は言葉を奪う…
中国・内モンゴル自治区で、当局は言葉を奪うだけでなく、歴史教科書からチンギスハンも抹殺した。今度はそれを国外でも行おうとし、強い反発を招いている。
フランスのナントの歴史博物館が準備をしていたチンギスハンをテーマにした企画展に、中国政府が「チンギスハン」「帝国」「モンゴル」という用語の削除を要求。怒った博物館側が開催を当面中止とした。
これに似た話を、1992年放送のNHKスペシャル「大モンゴル」について関係者から聞いたことがある。当初、NHK側はタイトルに「モンゴル帝国」という言葉を入れていたが、中国側が「帝国主義は反対だ」と言ったため変更したという。
「帝国」を使わないのはまだいいが、チンギスハンを語るのにモンゴルを入れないというのはあまりに無茶な話である。「中華民族」という虚構を押し通し、「モンゴル民族」を史上から消し去ろうというのか。
かつてヨーロッパに侵入し人々を震撼させたモンゴルに対し、好戦的で残酷という歴史観があり、中国は中華思想による漢族中心の史観があった。日本は「元寇」を体験した上に長らく中華史観に親しみ、近代に入ってから西洋の歴史学の影響を受けてきた。
しかし、近年は故岡田英弘氏や杉山正明氏らの遊牧騎馬民族から見た歴史観が徐々に受け入れられてきた。欧州でも同じような変化が起きているのだろうが、中国の対応はこうした趨勢(すうせい)に全く逆行するものだ。