新型コロナウイルスの感染拡大で3月から…


 新型コロナウイルスの感染拡大で3月から公演を中止していた歌舞伎座が1日に再開した。東京での感染拡大で少しためらいもあったが、出掛けてみて、これならば大丈夫と安心して5カ月ぶりの舞台を楽しむことができた。

 年配のファンも多い歌舞伎座としては、専門家の意見を参考に徹底した感染予防策を採った。客席は前後左右を開け、桟敷席や花道に近い席も空席にして全1808席の半分以下の823席に減らした。

 通常は昼夜2部制のところ、4部制にし、幕間なしの1時間ほどの演目に。1公演が終わるたびに客席を消毒し、場内での飲食物の販売も中止した。

 マスク着用はもちろん、入り口では検温、チケットのもぎりも客が行う。席に着いて周囲を見回すと、この日を待っていた歌舞伎ファンで、席はほぼ埋まっていた。

 第3部「義経千本桜『吉野山』」を観たが、浄瑠璃の三味線や太夫が特製の黒いマスクをしているのにまず驚いた。しかし、浄瑠璃語りは腹から声を出す独特の発声だからだろうか、聞き取りにくいという感じはなかった。

 勝手が違うと感じたのは、やはり大向こうからの掛け声がかけられない点だろう。静御前役の中村七之助が花道を出てきて、七三(しちさん)で止まったところ、通常であれば「中村屋!」と掛け声がかかるところだが、それができない。その代わり観客は、いつもより大きな拍手を送っていた。役者たちは熱のこもった演技でそれに応えていた。