5月は新緑の匂いを運ぶ風の季節。「風薫る」…


 5月は新緑の匂いを運ぶ風の季節。「風薫る」という俳句の季語がある。都会に住んでいると、若葉の匂いに接することが難しい。それでも、公園や街路樹の新緑に、かすかな匂いを感じたりする。

 そんな時、森や林が点在した地方都市に住んでいた頃のことを思い出す。早朝に林を通ると、一斉に香り立つ若葉の呼吸するような匂いに、何とも不思議な気持ちがしていた。木々が生長する命の息吹と言ってもいいかもしれない。

 森林浴という言葉があるように、木々の放つ匂いが心身に好影響を与えるのはよく知られている。ところが、その木々が「花粉症」のような症状を与える要素となっているのも事実。植林をしても伐採や間伐などを怠ってきたことの付けでもある。

 そういえば、新型コロナウイルス感染の症状に、匂いや味が感じられないというものがある。四季の移ろいは五感で感じるものだとすれば「風薫る」を感じられないのはまさに異常事態と言っていい。

 このほど政府が緊急事態宣言を一部解除した。新型コロナの終息まではまだ時間がかかりそうだが、回復への第一歩が始まったことは喜ばしい。が、新型コロナによってテレワークが中心になり、人と接しないため、鬱(うつ)病にかかる人も少なくないという。

 5月は大学の新入生や新社会人が「5月病」になるケースがよくあるが、新型コロナによるストレスから解放されるよう、一日も早い終息を願うばかりだ。