朝のテレビニュースで、東京・渋谷でタンポポ…


 朝のテレビニュースで、東京・渋谷でタンポポが咲いたと黄色い花の映像が映し出された。タンポポは4月の花だが、昨日、一昨日の東京は最高気温が15~16度と3月の陽気。今年の暖冬傾向を表すトピックスに心が浮き立つ。

 例年であれば、2月は暦の上では春でも、実際は春雪や冴(さ)え返りの厳しい、まだ冬の寒さが優勢の頃。コートの襟を立てて歩く日々なのである。

 タンポポに限らず、黄葉したイチョウの葉や黄色い花は光の具合で、時に黄金色に輝いて見えることも。野にある花の彩りの乏しいこの時期に、黄色い花は目にも心にも温かく入ってきて元気づけてくれる。

 初冬に深緑鮮やかな大きな葉をバックに菊形の黄色い花を多数つけて目立つ石蕗(ツワブキ)の花。冬の地面に鮮やかなカナリア色を散らせる福寿草。冬から早春にかけてのマンサク。梅に先駆けて甘い香りを漂わせて咲くロウバイの透き通った黄色などは、寒さの中にも春が近いことを告げ、励まされる風情がある。

 そして、黄色の系譜は菜の花やタンポポの登場をみて、早くも暖かな春満喫の季節到来を告げる。司馬遼太郎が菜の花を愛(め)でたのはよく知られているが、文豪・夏目漱石も「春は眠くなる。……ただ菜の花を遠く望んだときに目が醒(さ)める」(『草枕』)と菜の花を好んだ。

 色彩研究の専門家によると、黄色は白の次に太陽のエネルギーを反射し、見る者をポカポカと暖かくする。<菜の花や月は東に日は西に> 蕪村。