愛知県安城市で行われた3年前の「国際交流…


 愛知県安城市で行われた3年前の「国際交流音楽祭」。県内のベトナムやフィリピンからの多くの若い就業者が、自国の流行歌などを歌って楽しんでいたのは少々驚きだった。

 愛知県にはわが国の製造業の拠点となる会社が少なくない。中小企業でも、プラスチックやゴム、鋳造などさまざまな分野の市場でトップシェアを握る企業が多く、彼らのような海外からの働き手を必要としている。愛知県は東京都に次いで外国人の雇用率が高い。

 先端技術でも航空関連の三菱重工業小牧南工場、自動車産業のトヨタ自動車をはじめ、愛知県内には素材の炭素繊維の研究、製造で一頭地を抜く研究所やメーカーなどが根を張っている。

 「中部圏をイノベーションの拠点にしたい」と話すのは、中部経済連合会の豊田鉄郎会長。新素材や先端技術を使って新産業を創出する「スタートアップ企業」の育成に向け、政府が来年1月に公募予定の「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に名乗りを上げる計画だ。

 製造業の層の厚さに加え、自然科学系のノーベル賞受賞者を出した名古屋大のほか、名古屋工業大など優秀な工学系の大学もある。「産官学の総力戦で熱意を訴える」と豊田会長。拠点都市に選出されれば、政府から起業家、投資家の招致などで集中的な支援が受けられる。

 来年の東京五輪後の日本経済の失速(五輪ロス)を警戒する声は小さくない。愛知県を中心にした中部圏の頑張りに期待したい。