ベルギーの次は日本が脱退?
ベルギーは昨年12月、ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)から脱退すると通告した。UNIDOのEvstafyev広報部長が当方の質問に答え、「ベルギーが昨年末、脱退を通告してきたことは事実だ。ただし、同国は2015年分の分担金は支払わなければならない」と説明した。
ベルギーと言えば、欧州連合(EU)本部のブリュッセルがある国だ。その国がUNIDOから脱退を決定したことで、他の欧州諸国にも少なからずの影響は出てくるだろう。UNIDO担当外交官によると、「財政状況が苦しいスペインが次の脱退国だろう」と予想している。
UNIDOは、開発途上国の工業化を促進、加速し、この分野における国連の活動を調整するための機関として1966年の国連総会決議に従い、1967年1月1日に発足したが、ここ10年余り、幹部職員の腐敗、職務の非効率などから加盟国の批判の対象となっている。
UNIDO加盟国の脱退ラッシュについては、当コラムで過去、数回紹介した。カナダ、米国、オーストラリア、ニュージランド、英国、フランス、オランダ、ポルトガルなど欧米の主要国は既にUNIDOから手を引いている。欧州で脱退をまだ決定していない主要国はドイツだけだ。UNIDOからEU諸国が完全に撤退する日は近づいてきた。ドイツはUNIDOに独自の監査役を送り込み、UNIDOの腐敗状況を慎重に調査中だ。
当方は昨年10月、このコラム欄でUNIDO最大分担国・日本(約19%、約1461万ユーロ)もUNIDOの運営に不満を感じだしてきたこと、脱退の可能性はもはや排除できないことなどをUNIDOの内部情報から紹介した。
興味深い点は、UNIDOの腐敗問題を無視してきた日本のメディアがここにきて日本の「UNIDO脱退の日」を想定して取材活動を開始していることだ。例えば、ウィーンに特派員を派遣する大手日刊紙は先月22日、UNIDOの李勇事務局長とのインタビューをUNIDOの日本人の西川泰藏事務局次長を通じて申し込んでいる。質問の中には、「事務局長は最大分担国の日本が今後もUNIDOを支援するようにどのように説得する考えか」「日本は現在、経済的挑戦に直面し、緊縮を余儀なくされている。日本の対UNIDO財政支援にも影響が出てくると懸念しているか」など、中国人事務局長に尋ねている。
知人のUNIDO関係者は、「日本の新聞社は西川事務局次長を通じてインタビューを申請している。ということは、西川事務局次長を含めUNIDO関係者も日本の脱退の可能性について、李事務局長の口から直接聞き出したいという意向が含まれているはずだ。日本の脱退シナリオが非現実だったら、インタビュー申請段階でそのような質問は排除されていただろう」と分析している。
先のUNIDO広報部長は日本の脱退の可能性について、「日本のメディアの一部が報じていることは知っているが、正式には日本から脱退の意向を聞いていない。UNIDOとしては日本が脱退しないことを願うだけだ」と答えた。数年前だったら、「そんなことはない」と即一蹴しただろうが、欧米主要国の脱退ラッシュに直面し、「日本の脱退も考えられる」と受け取りだしてきたことを示唆した。
(ウィーン在住)