現代の井戸端


 認知症カフェ、子育てカフェといった「コミュニティカフェ」(コミュカフェ)があちこちに出現している。最近も近所の生涯学習支援施設の壁面に「おしゃべりカフェ」のチラシを発見した。

 コミュカフェは現代の井戸端と言われ、運営スタイルも目的もさまざま。先日、認知症カフェを開きたいという社会福祉士の知り合いに誘われ、開設講座に付き合う羽目になった。

 カフェ開設のノウハウを指南する開設講座は盛況で、その日も会場の後ろまで満席だった。コミュカフェを政策的に支援しているという大学教師は「賃料が払えず、補助金が切れたら半分以上は倒れてしまうのに、次々新しいカフェが生まれていることに正直驚いている」と話していた。

 カフェ視察で最も成功しているモデルケースのカフェを見学した率直な感想は、こんなしんどいことをよくやっているという印象だ。主婦パートや学生アルバイトを雇って、地元の有機野菜を使ったランチを提供したり、良質な地元野菜の店頭販売や配達もしているという。会食しながらの会議、ミニライブ、少人数の語学教室、囲碁や将棋、さらにパズルゲームなど、利用目的は多岐に亘(わた)る。多種類の事業を、人を動かして運営するのは相当大変だろうと容易に想像できた。

 ところがそこで活動する面々は実に生き生きと働いている。自分たちの力、創意工夫やアイデアを反映できる参加型の公共ビジネスが彼らを惹(ひ)きつけている。

 いま、都市生活者の共通の悩みは人のつながりが希薄であること。人間関係のあり方が仲間内に縮小化し、仲間以外は信じないし付き合わない。このままで超高齢化社会を乗り切れるのか。

 女性は無縁社会の危うさを日々皮膚感覚で感じている。そうした女性の感性が、現代の井戸端・コミュカフェに足を向けさせているように思う。(光)