「情動」を育てる家族愛


 子供の「情動」の発達に関する最新の研究を教育に活(い)かし、現在のいじめ問題などにも対応しようと、文部科学省が専門家の会議(「情動の科学的解明と教育等への応用に関する研究推進会議」)を設置している。

 情動(喜び、悲しみ、怒り、恐れなどの感情)は、子供の認知力や学習能力などの基礎になるもので、いじめなどの問題行動に及ぶのも情動の発達のひずみが大きな要因になっていると考えられている。

 同省の委員会が2005年に出した報告書では、以下のような研究が紹介されている。

 「子供の対人関係能力や社会的適応能力の育成のためには、適切な『愛着』(母親などとの間の強い情緒的結びつき)形成が重要」「子供が安定した自己を形成するには、他者の存在、特に保護者の役割が重要」「情動は、生まれてから5歳くらいまでにその原型が形成されると考えられるため、子供の情動の健全な発達のためには乳幼児教育が重要」「適切な情動の発達については、3歳くらいまでに母親をはじめとした家族からの愛情を受け、安定した情緒を育て、その上に発展させていくことが望ましいと思われる」。

 子供の心身のより良い成長のためには、母親をはじめ家族との愛着関係、つまり良く愛されることが何より大切というわけだ。

 逆に、児童虐待などを受けた子供は安定した愛着が形成されず、反応性愛着障害を引き起こすことがあるとの研究結果も公表されている。欧米の調査では、子供の情動が危機的状況にあり、心の病等が増加傾向にあるという。

 子供の成長にとって親子、家族関係が重要というのは、いわば当たり前と考えられていたこと。それを改めて自覚し、愛着関係を築いていくことを大切にしたい。それがいじめ問題の解決にもつながっていくということだ。(誠)