「婚学」のすすめ
シンポジウムで、「婚学」を提唱している佐藤剛史さん(九州大学助教)の話を聞く機会があった。
佐藤さんのゼミは1年生を対象に行われていて、定員20人のところ200人を超える学生が殺到するほどの人気を集めているという。
婚学と言っても、結婚や恋愛のノウハウを教えるわけではなく、「結婚は素晴らしいよ」とストレートに教え込むわけでもない。学生たちに自分で人生設計できる力を身に付けさせる総合的な人間教育になっているのが特徴だ。
授業では、「卵子の老化」をはじめ結婚や妊娠に関わる基本的な知識を伝え、さまざまな場面を想定してロールプレイなどを行う。これによって結婚に対するポジティブな価値観を身に付けさせるというのである。人気の秘密は、この辺りにありそうだ。
佐藤さんは、著書の中で婚学を始めた理由について「生まれてきてよかった」と思える子供を1人でも多く増やすため、若者が幸せな結婚をして幸福な家庭を築く力を身につけさせたいと考えた、と述べている。
日本の現状は、若者の未婚化が進み、少子化の大きな原因になっている。30~34歳でも男性の47・3%、女性では34・5%が結婚していない。
しかも「結婚しない自由」が当たり前のように言われる。学校教育でも教科書(家庭科)にそのような記述があるほどだ。
少子化対策も、これまでは仕事と子育ての両立支援が議論の中心だった。ようやく若者の結婚促進が強調されるようになったのは数年前からだ。
それだけに「結婚は人生で最大の成長の種」という佐藤さんの話は実に新鮮に響いた。将来の人生設計という意味でも、小中学校や高校の授業で結婚や子育て、家庭について、(子供たちの理解度や発達段階に合わせて)もっと取り上げてほしいと思う。(誠)