スポーツと健康


 スポーツ庁が今年10月、発足する。長い間、その必要性は言われてきたが、なかなか実現しなかった。2020年の東京五輪が追い風となったことは確かだが、もっと切実な問題が発足の背景にある。

 高齢化などで、医療費支出が膨らみ、国の財政を逼迫(ひっぱく)させている。そこでスポーツを通じて国民の健康増進を図ろうというのだ。

 近年「ロコモーティブシンドローム」(運動機能症候群=ロコモ)という言葉をよく耳にするが、ここにも高齢化とそれに伴う医療費増大という問題がある。骨・関節・筋肉などの運動器の衰えが要介護を増やしているが、日本人の“健康寿命”は寿命より7、8年短いというのだから深刻だ。

 そんなことから、体を動かすことの大切さを、若いうちから自覚してもらおうという啓発の意味からロコモが言われだしたのだ。

 筆者はこの大型連休に、自らの運動不足を実感する羽目になった。農業を営む実家に帰った折、田植えを手伝った。稲作も機械化されているとはいえ、苗を運ぶなど人手はいくらでもあったほうがいい。

 苗運びは女性でもできるのだから、力仕事ではない。しかも、作業を手伝ったのは半日だけ。ところが、翌日から全身を襲った筋肉痛が消えるまで3日かかった。エスカレーターをできるだけ使わないなど、都会生活の中では比較的体を動かしているほうだとうぬぼれていたが、自分もロコモ状態にあることを痛感させられた。

 子供時代は野山を駆けずり回った筆者でさえも、この有り様だ。遊びと言えば、真っ先に「ゲーム」を思い浮かべる今の子供たちが高齢者になる将来を想像すると、背筋が寒くなる。東京五輪でのメダル増産もさることながら、スポーツ庁の発足でサッカーや野球を楽しみながら体を鍛える子供が増えることを願わずにおれない。(森)