植物の葉序の神秘


 季節外れの台風にその直後の猛暑と、気まぐれな天気が続いている。「何とか心と秋の空」といわれるように、気まぐれなのは秋の空が定番だったが、近頃のお天道様は年がら年中、気まぐれのようだ。

 とはいえ、自然の営みはそんな中でも正確に時を刻みながら進んでいる。梅や桜に続き、八朔、ハナミズキなどの花が咲き、今は青々とした葉っぱが生い茂る季節を迎えている。目を地面に転じても雑草が力強く命の息吹を薫らせている。私たちが青葉若葉の候に感じる躍動感とすがすがしさは、旺盛に成長する植物の生命力によるところが大である。

 しかし、植物が持つ神秘はその生命力だけではない。その葉のつき方に深奥な数学が潜んでいるのだという。どんな植物も少しずつ葉の位置をずらしながら伸びていくが、葉がどんな角度でずれていくか(葉序)は植物の種類によって決まっていて、360度の1/2、1/3、2/5、3/8、5/13、8/21、……の角度にしかならない。例えば4番目の類型の植物の葉は下から135度ずつずれていって、ある葉から上に8番目の葉がちょうど元の葉から3周した位置にあるというのだ。

 この角度を表す分数の列を詳しく見ると、分子も分母もそれぞれ前の二つの分子(あるいは分母)の数を足した数になっている。例えば4番目の3/8の分子3はその前ともう一つ前の分子の数1と2を足したもので、分母の8は同じように3と5を足した数だ。こんな数をフィボナッチ数という。植物の葉は、こんな数学的に深奥な背景をもった付き方をしているわけだ。

 さらに、上の分数の列をずっと続けると、自然界で最も均整のとれた長方形の2辺の比率といわれる黄金比1・61…の逆数に近づく。最近、こんな事実を知ってビックリ。もっと生物をしっかり勉強していればと後悔している。(武)