コンビニの「有害図書」
東京都が青少年健全育成条例を改正し、都内の書店やコンビニで、「不健全図書」(有害図書)の区分陳列を始めたのは2004年だから、まる10年が過ぎたことになる。区分陳列は他の自治体にも広がっているから、子供の健全育成のための環境浄化はこの間、半歩前進したというところか。
なぜ、一歩前進ではないかというと、そもそも子供が日常的に立ち寄るコンビニに成人向け雑誌が陳列してあること自体が「異常」だからだ。しかも、卑猥(ひわい)な写真を掲載した表紙が子供にも見える状態で並んでいるのだ。地方によっては、女性のヌード写真を表紙にあしらった雑誌を店外に見える形で置いている店もある。
さすがに、店内で有害図書を立ち読みする未成年者の姿は見かけなくなったから、区分陳列の効果はまったくないとは言わない。しかし、前述した状況に加え、立ち読みする大人の面目をおもんぱかってのことなのか、成人雑誌は通常、販売員の目が行き届かない場所に陳列しているのは、やはり異常である。
こうした状況を変えようという声が大きくならないのは、コンビニで成人雑誌を販売することを当たり前のこととして受け取っている日本人が多いからだろう。慣れとは恐ろしいものである。
だが、コンビニに成人雑誌をまったく置かない国は多いのだから、そんな国からやってきた観光客は日本の店に入ったら、顔をしかめるだろう。「これでも半歩前進です」なんて聞いたら、さらに驚くに違いない。
日本を訪れる観光客は年間1000万人を超えている。東京五輪が開かれる2020年までに2000万人にする目標もある。外国の基準が何でも正しいとは思わないが、子供が利用するコンビニで成人雑誌を販売することは、果たして先進国として胸を張れることなのか、考えるべき時に来ている。(森)